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Branding 2
ブランディングとは2

ブランディングを成功させるノウハウを徹底解説!
基本的ノウハウから実践的ノウハウまで紹介します
【実践編】





有益で有効なブランディングとは何か。ブランディングの考え方や種類、実践方法、成功事例などの戦略的なアプローチについて、【基本編】に続いて解説していきます。

【実践編】は、より実践的な内容となっています。

ブランディングとは何か。経験豊富なブランディング会社が解説します

6. ブランディングの手順

ブランディングの具体的な手順を知ることも、ブランディングを理解する手助けとなります。

ブランディングをどのように進めていくべきなのか? どのタイミングで体制づくりや意思決定を行うべきなのか? それらの手順や内容をステップごとに解説します。

ブランディングの手順

6ー1 実施に向けた準備

ブランディングの実施に向けた準備は、まず「ブランディングの必要性」を検討することからはじまります。ブランディングとは何かを理解しておくと、この検討がスムーズに進みます。

ブランディングの必要性が明確になれば、次にプロジェクト準備チームを編成し、内製での実施か外部委託かを検討しつつ、予算枠を検討します。


● ブランディングの必要性」の検討
最初にブランディングの必要性を検討します。経営陣が発起人となって発足することが多いブランディングプロジェクトですが、社内体制や中長期的戦略、社内の機運を見据えた上で、なぜブランディングが必要なのかを明確にします。この検討を通じて、ブランディングの必要性とその目的が見えてきます。ちなみに、ブランディングの必要性の見極めは、大企業であっても中堅・中小企業であっても、一定の期間を要する傾向が見られます。検討の結果、もちろんブランディングを実施しない選択肢もあり得ます。
● 「内製で行うか外注するか」の検討
そして、ブランディングを内製で行うか外注するかを検討します。内製の場合、社内リソースを活用できますが、予想した成果が得られないことがあります。一方で外部の専門会社を活用する場合、確実な成果が期待できますが、一定のコストが発生します。客観的な比較検討を行いながら、どちらが自社にとって適しているか慎重に評価して選択します。
● 予算枠の設定
また、プロジェクトの予算枠の設定も必要です。必要だと思われる施策の費用を見積もり、現実的かつ柔軟な予算を設定します。

6ー2 目的の設定

プロジェクトの失敗のリスクを減らし、成功の可能性を高める秘訣は、プロジェクト目標の設定にあると言っても過言ではありません。ブランディングにおいても先ずは目的を設定し、その目標達成に適したプロジェクトチームを編成します。そしてプロジェクトチームが主体となって、プロジェクトのステップとゴールを設定します。


● 「プロジェクトの目的」の設定
ブランディングプロジェクトの成功には、明確な目的設定が欠かせません。企業価値を向上したいのか、パーパス経営の取り入れたいのか、ブランドの認知度を高めたいのか、顧客ロイヤルティを強化したいのか、あるいは売上を増加させたいのか、具体的で測定可能な目標を設定することが重要です。
● プロジェクトチームの編成/プロジェクトオーナーの決定
次に、プロジェクトチームを編成し、プロジェクトオーナーを決定します。各部門から選出したチームを編成し、役割とタスクを設定します。プロジェクトオーナーは、実施に向けた準備を主導してきた経営トップや経営メンバーが就くことが多く、ブランディングプロジェクトの全体を統括し、進行状況を管理する責任を持ちます。
● 「プロジェクトのステップおよびゴール」の設定
ブランディングプロジェクトのステップおよびゴールを具体的に設定することも不可欠です。プロジェクトの各段階で達成すべき目標を明示し、進捗状況を定期的に確認することで、プロジェクトの遅延や中止というリスクを回避します。

6ー3 ブランドの分析

ブランディングにおけるブランドの分析は、複数の工程から成り立ちます。まず、ブランドの現状を客観的に把握します。次に外部分析を通じて顧客動向や競合状況を評価します。さらに内部分析を行い、経営陣の意思や従業員の意見を把握します。これらの情報を基に、現在のブランドの位置付けや課題を明確化し、未来に向けたブランド戦略立案の基盤とします。


● ブランドの現状分析
ブランディングプロジェクトを成功させるためには、ブランドの現状分析が必要です。例えばSWOT分析を行い、自社の強み、弱み、機会、脅威を総合的に評価します。下記のような分析を通じて、自社がどのような強みを持ち、どのような課題に直面しているかを明確にします。
現状分析の手法と内容
SWOT分析強み、弱み、機会、脅威を分析する手法。内部と外部の要因を包括的な評価で、戦略立案やリスク管理に役立つ
PEST分析政治、経済、社会、技術の要因を評価する手法。マクロ環境の理解と、ブランドに影響する外部要因を予測できる
ポートフォリオ
分析
ブランドの各商品やサービスを市場成長率と市場シェアで分類し、分析する手法。資源配分の最適化に役立つ
3C分析顧客、競合、自社を分析する手法。ブランドポジションのヒントとなり、競争優位性を高める戦略立案に役立つ
4P分析マーケティングミックスの4要素を評価する手法。商品・サービスの市場競争力を高める戦略立案に役立つ
現状分析の手法と内容
SWOT分析強み、弱み、機会、脅威を分析する手法。内部と外部の要因を包括的な評価で、戦略立案やリスク管理に役立つ
PEST分析政治、経済、社会、技術の要因を評価する手法。マクロ環境の理解と、ブランドに影響する外部要因を予測できる
ポートフォリオ分析ブランドの各商品やサービスを市場成長率と市場シェアで分類し、分析する手法。資源配分の最適化に役立つ
3C分析顧客、競合、自社を分析する手法。ブランドポジションのヒントとなり、競争優位性を高める戦略立案に役立つ
4P分析マーケティングミックスの4要素を評価する手法。商品・サービスの市場競争力を高める戦略立案に役立つ
● ブランドの外部分析
次に、ブランドの外部分析を行います。外部分析は、アンケート調査やフォーカスグループインタビューなどの手法を用いてデータを収集し、実施します。これにより、自社ブランドの認知度、利用者がどのような企業や事業、製品・サービスを求めているか、競合他社がどのようなブランド戦略を採用しているかが把握できます。
外部分析の手法と内容
アンケート調査インターネット等で質問票を配布し、定量的なデータを収集し、分析する手法。統計的な結果を得られる
クラスター分析
(プロファイリング)
多変量解析によって利用者や従業員のセグメントを抽出する手法。ブランディングの精度が高まる
フォーカスグループ
インタビュー
司会者が対話をリードし、深層的な意見や感情を引き出す手法。潜在的なニーズや心理を深く把握できる
外部分析の手法と内容
アンケート調査インターネット等で質問票を配布し、定量的なデータを収集し、分析する手法。統計的な結果を得られる
クラスター分析
(プロファイリング)
多変量解析によって利用者や従業員のセグメントを抽出する手法。ブランディングの精度が高まる
フォーカスグループ
インタビュー
司会者が対話をリードし、深層的な意見や感情を引き出す手法。潜在的なニーズや心理を深く把握できる
● ブランドの内部分析
ブランドの内部分析も欠かせません。企業の理念やパーパス、MVVが現状のブランドにどのように反映されているかを調査し、評価します。また、経営陣の意思や意向をインタビューによって定性的に把握します。同時に従業員の満足度やロイヤリティ、エンゲージメントの状況も社内アンケート調査によって定量的に把握します。
内部分析の手法と内容
デスクリサーチ既存の資料やデータを収集・分析して評価する手法。迅速かつ低コストで広範な情報を収集できる
経営陣インタビュー経営陣の意思や意向を定性的に把握する。経営層の戦略的意図を理解でき、ブランドの方向性が明確になる
従業員アンケート従業員の意見や感情を定量的に把握する。満足度やロイヤリティ、エンゲージメントを統計的に把握できる
内部分析の手法と内容
デスク
リサーチ
既存の資料やデータを収集・分析して評価する手法。迅速かつ低コストで広範な情報を収集できる
経営陣
インタビュー
経営陣の意思や意向を定性的に把握する。経営層の戦略的意図を理解でき、ブランドの方向性が明確になる
従業員
アンケート
従業員の意見や感情を定量的に把握する。満足度やロイヤリティ、エンゲージメントを統計的に把握できる
これらの分析を通じて、ブランドの現在の立ち位置を総合的に把握し、強みを最大限に生かしながら、弱みを克服するための具体的な戦略を策定します。ブランドの現状を正確に理解することで、次のステップであるブランド戦略の立案に向けた確固たる基盤が築かれます。

6ー4 ブランド戦略の策定

ブランドを分析した後は、ブランド戦略を策定する段階に進みます。このステップでは、企業ブランディングの場合と事業(商品・サービス)ブランディングの場合に分けてアプローチする必要があります。


● 企業ブランディングの場合
企業ブランディングでは、社内外のステークホルダーに向けて一貫したメッセージを伝えるために、企業全体のアイデンティティを戦略的に策定します。

企業の理念やパーパス、ミッション、ビジョン、価値観などを明確にし、それをコミュニケーションに反映することで、企業の信頼性や評判を高め、競争優位性を築きます。
企業ブランドのアイデンティティ要素
企業理念強み、弱み、機会、脅威を分析する手法。内部と外部の要因を包括的な評価で、戦略立案やリスク管理に役立つ
パーパス政治、経済、社会、技術の要因を評価する手法。マクロ環境の理解と、ブランドに影響する外部要因を予測できる
ミッション、
ビジョン
ブランドの各商品やサービスを市場成長率と市場シェアで分類し、分析する手法。資源配分の最適化に役立つ
バリュー
(価値観)
顧客、競合、自社を分析する手法。ブランドポジションのヒントとなり、競争優位性を高める戦略立案に役立つ
ドメインマーケティングミックスの4要素を評価する手法。商品・サービスの市場競争力を高める戦略立案に役立つ
企業ブランドのアイデンティティ要素
企業理念強み、弱み、機会、脅威を分析する手法。内部と外部の要因を包括的な評価で、戦略立案やリスク管理に役立つ
パーパス政治、経済、社会、技術の要因を評価する手法。マクロ環境の理解と、ブランドに影響する外部要因を予測できる
ミッション、
ビジョン
ブランドの各商品やサービスを市場成長率と市場シェアで分類し、分析する手法。資源配分の最適化に役立つ
バリュー
(価値観)
顧客、競合、自社を分析する手法。ブランドポジションのヒントとなり、競争優位性を高める戦略立案に役立つ
ドメインマーケティングミックスの4要素を評価する手法。商品・サービスの市場競争力を高める戦略立案に役立つ
● 事業(商品・サービス)ブランディングの場合
事業(商品・サービス)ブランディングでは、ブランドの価値や独自性を顧客に伝えるために、マーケットを見据えながら戦略的にブランドイメージを構築します。

ブランドのターゲットやポジション、パーソナリティ、ベネフィットなどを明確にし、それをコミュニケーションに反映することで、事業(商品・サービス)の魅力や評判を高め、競争優位性を築きます。
事業(商品・サービス)ブランドのブランドイメージ要素
ターゲット特定の顧客層に焦点を当てて戦略を立てることは、事業(商品・サービス)ブランド戦略の要
ポジションブランドが市場でどのように位置づけられ、競争相手とどう差別化するかを示す
パーソナリティブランドが持つ個性やキャラクター。ステークホルダーとの感情的なつながりを強化するために重要
機能的
ベネフィット
製品、サービスが提供する具体的な利益や価値。機能や効果など
情緒的
ベネフィット
生活者に提供する感情的な満足やつながり。ブランドのイメージや感情的な価値を強化する
事業(商品・サービス)ブランドの
ブランドイメージ要素
ターゲット特定の顧客層に焦点を当てて戦略を立てることは、事業(商品・サービス)ブランド戦略の要
ポジションブランドが市場でどのように位置づけられ、競争相手とどう差別化するかを示す
パーソナリティブランドが持つ個性やキャラクター。ステークホルダーとの感情的なつながりを強化するために重要
機能的
ベネフィット
製品、サービスが提供する具体的な利益や価値。機能や効果など
情緒的
ベネフィット
生活者に提供する感情的な満足やつながり。ブランドのイメージや感情的な価値を強化する

6ー5 ブランドのクリエイション

ブランドクリエイションでは、ブランドアイデンティティを視覚的・言語的に表現するクリエイティブ要素を開発します。各要素を一貫性と統一性をもって開発し運用することで、差別化や認知度向上、好感醸成などを目指します。


● ブランド名称
ブランドの価値やメッセージを反映するブランド名称は、ブランドの認知や信頼性を高めるために重要な役割を果たします。適切な名称はブランドの成長を加速させます。
● ブランドメッセージ(ステートメント)
ブランドのアイデンティティを、端的かつ印象的に伝えるフレーズの開発を目指します。ブランドの核心を表現するブランドメッセージは、ステークホルダーとの感情的なつながりを築くために重要な役割を果たします。
● トーン&ボイス
ブランドのパーソナリティや価値観を反映した口調や言葉遣いを設定します。適切なトーン&ボイスは、ブランドアイデンティティの構築に寄与し、ステークホルダーからの信頼感と親しみを醸成します。
● ロゴマーク
ブランドの視覚的な象徴であるロゴマークを戦略的に開発します。ユニークで記憶に残るロゴマークは、ブランド認知度を効率的に高め、競合他社との差別化に役立ちます。
● ブランドカラー
ブランドを視覚的に認識しやすくするカラーシステムを開発します。適切なカラーの選定と運用は、一貫したブランドイメージを効果的に形成し、視覚的な訴求力を高めます。
● イメージスタイル
ブランドのコミュニケーション時に使用する画像やグラフィックのスタイルを設定します。統一感のあるビジュアルスタイルは、ブランドの世界観を醸成し、視覚的な魅力を引き立てます。

6ー6 ブランドのコミュニケーション

ブランドクリエイションの次のステップはブランドコミュニケーションです。ブランドコミュニケーションというと、広告やPRなど個々の施策を連想しがちですが、特性の異なる4つのメディアに分類した上で、それぞれの施策を理解した方がアプローチしやすくなります。


● オウンドメディア(自社媒体)
公式Webサイトやブログ、企業のソーシャルメディアアカウント、会社案内、商品カタログなど、自社が直接管理するメディアを活用します。これらのメディアを通じて、一貫したブランドメッセージを発信し、ステークホルダーとのエンゲージメントを深めます。例えば、定期的なブログの更新、企業情報やニュースの配信、ソーシャルメディアでのキャンペーン実施などを行います。
● ペイドメディア(有料媒体)
テレビ広告、オンライン広告、SNS広告など、さまざまな広告手法を組み合わせて、ブランド認知度を向上させます。ペイドメディアでは、ターゲット市場に最適化した上で一貫したブランドイメージを発信することを意識します。
● シェアードメディア(共有媒体)
SNSを活用してステークホルダーとの双方向コミュニケーションを図ります。ブランドに関する情報を随時共有しステークホルダーからのフィードバックや口コミを促すことで、ブランドのファンコミュニティを形成し、エンゲージメントを高めます。例えば、ユーザー生成コンテンツ(UGC)の活用、インフルエンサーとの協力、コンテストやキャンペーンの実施などが効果的です。
● アーンドメディア(獲得媒体)
PR活動やインフルエンサーとの協力を通じて、信頼性のある情報を発信し、ブランドの客観的評価を高めます。プレスリリースの発信、メディア関係者との関係構築、インフルエンサーによる製品レビューや推薦など第三者の評価の活用や、口コミやレビューサイトでのポジティブな評価を促すことで、ブランドの認知度と信頼度を高めます。

6ー7 成果の検証と改善

ブランディングの最後のステップとして実施した施策の効果を検証し、必要であれば改善を行います。検証と改善の方法についていくつか解説します。


● 定期的なKPIの把握
設定したKPI(主要業績評価指標)を基に、ブランド認知度の向上、顧客エンゲージメントの増加、売上の変動などを定期的に測定します。その上で、施策の効果を客観的に評価し、どの施策が効果的であったかを明確にします。
● 顧客からのフィードバックの収集
顧客からのフィードバックを収集することも大切です。アンケート調査やオンラインレビューの分析を通じて、顧客の評価や期待を把握し、顧客視点で改善点を明確にします。
● 改善の例
収集したデータを基に、効果的な施策とそうでない施策を分析し、改善点を洗い出します。ブランディング広告が期待通りの成果を上げていない場合、その原因を分析した上で、クリエイティブの見直しやターゲティングの調整を行います。また、ソーシャルメディアのエンゲージメントが低い場合、投稿内容やタイミング、プラットフォームの選定を見直します。

7. 実行段階のブランディング施策

具体的なブランディング施策として、実行段階(=ブランドのクリエイションとコミュニケーション)の施策のうち主な10項目について解説します。

それぞれについて幾つかの事例も紹介していますので、ブランディングとは何かを分かりやすく理解できると思います。

7ー1 ブランドメッセージの開発

ブランドメッセージの開発では、ブランドの核となるミッションや価値観を明確にし、それを簡潔で力強いワンワードで表現します。良質なブランドメッセージは、ブランドのアイデンティティ構築に大きく寄与します。

例1)資生堂「一瞬も 一生も 美しく」
資生堂の「一瞬も 一生も 美しく」というコーポレートメッセージは、新しく深みのある価値を発見し、美しい生活文化を創造する。という資生堂の企業理念を象徴する言葉として2005年に策定されました。化粧品ユーザーの本質的ニーズに適うともに、商品の短期的効果と長期的信頼、そして品質をアピールするこのメッセージは、資生堂の事業活動、CSR活動、企業文化活動などの指針となっています。


例2)ファーストリテイリング「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」
2005年から使用されているこのブランドメッセージは、ファーストリテイリング(ユニクロの親会社)の革新的なアプローチを表現しています。ユニクロを含むグループ全体で、ファッションを通じて社会に変革をもたらすことを目指し、同社の売上高は2020年度には約2.3兆円に達しました。


例3)キュラーズ(Quraz)「広がる空間、広がる自由」
全国の主要都市でトランクルームサービスを提供するキュラーズは、顧客への提供価値をもとに開発された「広がる空間、広がる自由」とういブランドメッセージを発信しています。2017年にオリコン顧客満足度ランキングで8年連続総合1位を獲得するなど、順調にユーザー数を増やし、安定的な事業成長を続けています。
「キュラーズ」のブランディングはこちら

7ー2 ネーミングの開発

ネーミングの開発では、その企業や事業、商品・サービスにふさわしい名称(ネーミング)を開発します。基本的にどのような名称であっても企業や事業、商品・サービスは成長します。しかし、良質なネーミングが与えられると、確実かつ速やかに成長します。

例1)トヨタ「レクサス(Lexus)」
トヨタの高級車ブランド「レクサス(Lexus)」は、1989年に北米で販売を開始しました。レクサス(Lexus)という名前は、高級感とエレガンスを連想させる響きを持ち、トヨタの信頼性と技術力を兼ね備えた高級車ブランドとして定着。大衆車メーカーによる高級車市場参入の成功例となりました。


例2)ソニー「PlayStation」
ソニーのゲームコンソールブランド「PlayStation」は、1994年に初代モデルが発売され、シリーズを通してゲーム業界でのソニーの地位を確固たるものにしています。直感的で覚えやすい「プレイステーション」という名称ですが、その商標は、発売の17年前である1977年に株式会社ソニーコンピュータエンタテインメントにより出願され、1980年〜1982年に商標登録されています。


例3)GRANDIT「GRANDIT miraimil(ミライミル)」
ERP導入企業数1,400社以上の実績を持つGRANDIT株式会社は、新ERPサービスの名称を「GRANDIT miraimil(ミライミル)」としました。この名称は、中小企業が“未来を見る”ための統合型ERPというブランドアイデンティティに基づいています。2021年のローンチ以来、miraimilは計画を上回るペースで中小企業の顧客を獲得し、ブランド戦略を推進しています。
「GRANDIT miraimil(ミライミル)」のブランディングはこちら

7ー3 ロゴマークの開発

ロゴマークの開発は、視覚的な面でブランドアイデンティティの確立を目指します。ロゴマークの使用シーンは以下のように多岐にわたるため、ブランドアイデンティティの確立において非常に大きな役割を果たします。

● コーポレートツール:名刺、レターヘッド、封筒、社員ID、企業サイン(看板)、業務車両など
● オウンドメディア(自社媒体):自社公式サイトや特定のキャンペーンページなど
● シェアードメディア(共有媒体):Facebook、X、InstagramなどのSNSのプロフィール画像やカバー画像、投稿画像
● 印刷ツール:カタログ、パンフレット、IR資料など
● 広告ツール:印刷広告(新聞広告、雑誌広告等)、オンライン広告(バナー広告、リターゲティング広告等)、看板広告(ビルボード、バス停広告等)など
例1)カルビー(Calbee)
日本を代表する菓子メーカーの一つであるカルビーは、2019年にリブランディングを行い、新しいロゴマークを導入しました。新しいロゴマークはシンプルで親しみやすいデザインでありながら、同社の伝統と革新が組み合わされています。このロゴは、パッケージデザインから広告、IR資料まで幅広く使用され、「おいしさと健康を両立させる」というカルビーのアイデンティティを強化しています。。


例2)リクルートホールディングス(Recruit Holdings)
リクルートホールディングスは、2012年の新グループ体制のスタートを機に、新しいロゴマークを発表しました。“架け橋”をイメージしたこのロゴマークは、「リクルートグループが 人と機会、いまと未来、ここと世界をつなぐ架け橋となる。(中略)わたしたちが世の中へ まだ、ここにない、出会い。を届ける」というコーポレートメッセージを表現したものです。このロゴマークは、人材・住宅・結婚など幅広い事業領域を持つリクルートグループ全体で使用されています。


例3)ラクス(Rakus)
株式会社ラクスは、複数のサービスを展開する中で、クロスセル効果の改善と企業認知の向上を課題としていました。これを解決するためアンブレラブランド戦略を採用し、新社名「ラクス」を導入。印象的なロゴマークと「すぐ便利、ずっと満足。」というブランドメッセージを開発し、新しいブランドコミュニケーションを開始しました。これにより企業認知が向上し、サービス間のクロスセルも増大。業績は順調に伸び、6年後には東証マザーズに上場を果たしました。
「ラクス(Rakus)」のブランディングはこちら

7ー4 コーポレートツールの開発

コーポレートツールの開発では、名刺、レターヘッド、封筒など、企業業務で使用するツールを統一的に開発します。ブランドガイドラインと歩調を合わせて開発することで一貫した運用が可能となり、ビジュアルのアイデンティティが毀損されることを未然に防ぎます。

例1)住友不動産(Sumitomo Realty & Development)
不動産開発を主体とする住友不動産の名刺は、都市空間の調和と社会貢献の意識を反映したデザインで、企業の持続可能性の表現を意識しています。働く場所や役職によってテキストの表示規定は異なり、マニュアルで管理されています。


例2)ラクス(Rakus)
株式会社ラクスは、「楽楽明細」などのクラウドサービスを提供する企業です。同社は名刺や封筒などのデザインを2009年に統一し、ブランドガイドラインを用いて運用しています。この成果として社内外のコミュニケーションが効率化され、顧客からの信頼度が20%向上し、従業員の満足度が15%上昇したという報告もあります。
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7ー5 ブランドガイドラインの制作

ブランドガイドラインとは、ブランドの視覚的および言語的な規定を説明する冊子もしくはデータファイルです。ブランドの一貫性を維持しクオリティを担保する手引書として、企業内で共有されます。

例1)三菱商事(Mitsubishi Corporation)
多岐にわたる事業を展開する総合商社である三菱商事は、コーポレートツールの開発においてブランドガイドラインを厳密に順守しています。2017年に策定された最新のブランドガイドラインによって、デザインの統一性と使用方法がより明確化され、企業のビジュアルアイデンティティの確立を推進しています。


例2)寺岡精工(TERAOKA/DIGI)
世界第2位の計量器・POSシステムのメーカーである寺岡精工は、ビジネスユニット制度の導入後に企業イメージの分散によりリスク要因が生じていました。そこで一貫したTERAOKA/DIGIブランドの確立を目指してブランドガイドラインを制定。さらにグローバル展開での統一性を強化するために、グローバルVI(ビジュアルアイデンティティ)マニュアルを開発します。これらの取り組みは功を奏し、4年間で売上高25%増という好業績を後押ししました。
「寺岡精工(TERAOKA/DIGI)」のブランディングはこちら

7ー6 Webサイトの開発

Webサイトは、オウンドメディア(自社媒体)のうち特に重要なもので、ブランド価値やミッションの発信、好感や共感の獲得、ブランドアイデンティティの確立に大きな役割を果たします。ユーザーエクスペリエンス(UX)を重視したコンテンツやデザインも重要ですが、ブランドとしてのメッセージ性を意識する必要があります。

例1)無印良品(MUJI)
無印良品は、製品の購入だけでなく、ライフスタイルや持続可能性に関する情報発信をオンラインストアにて行っています。2000年にオンラインストアを開設した当時の商品数は2,500程度でしたが、現在は7,000となり、ECサイトの枠を超えた、ブランドの哲学や高品質を訴求するプラットフォームとして活用されています。


例2)横山香料
120年の歩みを経て中堅企業へと成長し、業界内で確かな存在感を示す横山香料。業績の伸長と社員数の増加を背景に企業ブランディングに取り組みます。理念を継承したままMVVを再策定した横山香料は、「明日の食を 豊かに彩る」というアイデンティティの構築に向けて、メッセージ性を重視した企業Webサイトを再開発しました。
「横山香料」のブランディングはこちら

7ー7 SNSの活用

SNSの活用は、ブランドの認知度を高め、顧客とのエンゲージメントを深めるために有効に機能します。顧客層が好むSNSプラットフォームを特定した上で、定期的な投稿やインタラクティブなコンテンツを通じてフォロワーとコミュニケーションを図ります。

例1)ローソン(Lawson)
ローソンはTwitter(現X)を活用して顧客と直接コミュニケーションを行いました。例えば季節限定商品の発売を告知し、フォロワーからのリツイートやコメントを募集するキャンペーンを実施。2019年には1週間で30,000件以上の参加がありました。


例2)メガネトップ(Megane Top)
メガネトップはInstagramを使ったビジュアルコンテンツ戦略でブランド認知を高めました。特に若年層をターゲットにした、スタイリッシュでトレンド感のあるメガネの写真を定期的に投稿。2018年以降、フォロワー数は年間20%以上増加しました。

7ー8 テレビ広告

テレビ広告には、広範なリーチ、視覚的・聴覚的な影響力、信頼性の向上、ブランド認知の強化などのメリットがあります。その一方で、高いコスト、多様化による視聴者の分散・希薄化、効果測定の難しさなどのデメリットがあります。

例1)日本郵政「かんぽ生命」
日本郵政は、かんぽ生命という生命保険ブランドを広めるために、感動的なストーリーや家族愛をテーマにしたテレビCMを展開。特に2018年には、多くの視聴者から共感を呼び起こし、ブランドの人間性と信頼性を訴求する成功を収めました。


例2)ソフトバンク(SoftBank)
ソフトバンクは、通信サービスの提供を中心にしたテレビ広告を効果的に活用しています。たとえば独自のキャラクターを活用したCM(2007年に開始した「白戸家」シリーズ)が話題となり、ブランドの親しみやすさと共にサービスの魅力を伝えています。

7ー9 オンライン広告

オンライン広告では、精緻なターゲティング、容易な効果測定、コスト効率の良さ、即時性・柔軟性などのメリットがあります。その一方で、ユーザーの広告ブロック設定によるリーチの制限、スパム広告の増加に伴う信頼性の低下などのデメリットがあります。

例1)スクウェア・エニックス(Square Enix)
スクウェア・エニックスは、新作ゲームのプロモーションを、オンライン広告を中心に展開しています。特に2016年以降ターゲティング広告を用いて未購入ゲーマー層に直接訴求し、ゲームの事前登録や販売促進を図っています。その結果、ファイナルファンタジーVIIなど複数のゲームタイトルで事前予約数が100万人を突破しています。


例2)楽天(Rakuten)
楽天はポイントプログラムを活用したオンライン広告を展開しています。データ活用を強化した2017年以降、会員利用データを基にした個別のターゲティング広告を実施し、顧客の購買行動を促進。この取り組みにより広告費対効果(ROAS)が年間10%以上改善されました。

7ー10 コンテンツマーケティング

コンテンツマーケティングは、ブログ記事、動画、ホワイトペーパーなど顧客にとって価値のあるコンテンツを通じて、顧客との関係を築く手法です。顧客エンゲージメントの向上やリード獲得どのメリットがある一方で、多くの時間と労力が必要、即効性が低いなどのデメリットがあります。

例1)マネーフォワード(Money Forward)
マネーフォワードは、家計簿アプリやクラウド会計ソフトを提供しており、ブログやYouTubeを通じて税務や経理に関する専門的な情報を発信しています。YouTubeチャンネルのコンテンツでは視聴回数1万回を超えるものが多数あり、10万回を超えるものも複数存在します。


例2)キントーン(kintone)
サイボウズ株式会社が提供するグループウェア「kintone」は、利用者向けのブログ記事やケーススタディを充実させています。実際の企業導入事例を通じて利用者がどのようにkintoneを活用しているかを紹介することで、新規ユーザーの獲得に結び付けています。

8. ブランディングプロジェクトを成功させるポイント

ブランディングプロジェクトを成功させるポイントは複数存在します。そのうち特に重要なものを4点に絞って紹介します。

この4点は、「ブランディングプロジェクトの失敗」というリスクを回避するための最低限のポイントでもあります。ブランディングとは何かの本質的な要素として参照ください。

8ー1 明確なプロジェクト目標の設定

明確で具体的なプロジェクト目標の設定こそ、ブランディングプロジェクトの成功への第一歩です。

目標が明確であれば、プロジェクト全体が一貫性を持ち、チームは一丸となって効果的に作業を進めることができます。目標が定まっていることで、進捗を管理し、成果を評価する基準も明確になります。

8ー2 プロジェクトオーナーの存在

プロジェクトオーナーの存在は、プロジェクトの円滑な進行と成果に大きく貢献します。

プロジェクトオーナーがリーダーシップを発揮することで、チームメンバーの意思統一とボードメンバーの合意形成が順調に進みます。プロジェクトオーナーが明確なプロジェクトビジョンを持つことで、チームメンバーのモチベーションは高まります。

8ー3 プロジェクトチームメンバーの能動的な関与

プロジェクトチームメンバーの能動的な関与は、成果物のクオリティを高める重要な要素です。能動的な関与とは、単にタスクをこなすだけでなく、プロジェクト全体に対して積極的に貢献し、ブランドの視点で考え、行動する姿勢を指します。

プロジェクトを通してメンバー自身のエンゲージメントを高めることが、ステークホルダーとのエンゲージメントを高める原点に他なりません。

8ー4 ブランディングにおける確かな知見とノウハウの活用

ブランディングプロジェクトの成功には、確かな知見とノウハウの活用が重要です。社内リソースの視点では、企業内のブランド担当者やマーケティングチームの専門知識を最大限に活用します。一方、社外リソースの視点では、ブランド戦略の専門コンサルタントや広告代理店の知見を取り入れます。

社内・社外のリソースに関係なく、客観的視点や最新トレンド、過去の実績に立脚できれば、効果的なブランディングが期待できます。

9. まとめ【実践編】

戦略的なブランディングとは?【実践編】のポイントは、以下の3点となります。



1. ブランディングの手順
ブランディングの手順は、「1.実施に向けた準備」→「2.目的の設定」→「3.ブランドの分析」→「4.ブランド戦略の策定」→「5.ブランドのクリエイション」→「6.ブランドのコミュニケーション」→「7.成果の検証と改善」となります。プロジェクトの成功に向けて、特に1と2を念入りに取り組む必要があります。

2. 実行段階のブランディング施策
「ブランドメッセージの開発」や「ロゴマークの開発」、「Webサイトの開発」など、実行段階におけるブランディング施策には複数の選択肢があります。ブランディングの目的や目標に合わせて取捨選択し、必要であれば段階を分けて取り組みます。

3. ブランディングプロジェクトを成功させるポイント
ブランディングプロジェクトを成功させるポイントは以下の4点です。
● 明確なプロジェクト目標の設定:明確で具体的なプロジェクト目標の設定こそ、ブランディングプロジェクトの成功への第一歩
● プロジェクトオーナーの存在:プロジェクトオーナーの存在は、プロジェクトの円滑な進行と成果に大きく貢献する
● プロジェクトチームメンバーの能動的な関与:プロジェクトチームメンバーの能動的な関与は、成果物のクオリティを高める重要な要素
● ブランディングにおける確かな知見とノウハウの活用:ブランディングプロジェクトの成功には、社内リソースであっても社外リソースであっても、確かな知見とノウハウの活用が重要



以上、ブランディングとは何かについて解説してきました通り、ブランディングには複数の手順や施策が存在します。自社の課題や目標に適したものを選び、中・長期的な視点で取り組むことで着実に効果が現れます。

ブランディングの考え方やメリット・デメリット、各種バリエーションについてはブランディングとは?【基本編】で解説していますので、そちらも参照ください。


ブランディングとは何か。なくてはならないブランドをつくるブランディング会社が解説します

最後に、戦略系ブランディング会社「フォアビスタ」をご紹介します。

フォアビスタでは、利益と意義の双方を追求する目的思考アプローチで「なくてはならないブランドづくり」を行っています。ブランディング専門のコンサルティング会社として、企業の目標達成を支援しています。
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