実践的ブランディング
ブランド価値を高めている企業がやっている5つのこと
2025年3月10日7分読み


エグゼクティブサマリー
ブランド価値とは、単なる認知やロゴの美しさではなく、企業が市場でどのように信頼され、選ばれるかを決定づける重要な要素です。とくに中堅・中小企業にとって、ブランドは限られた資源の中で競争力を高めるための有効な手段であり、経営戦略の核ともなり得ます。
本レポートでは、「ブランド価値を高めている企業が実際に取り組んでいる5つの行動」を、国内中小企業の実例を交えながら紹介し、それぞれの取り組みがなぜ効果を発揮したのか、どのように応用可能なのかを解説します。これからブランドづくりに取り組もうとしている企業にとって、実践のヒントとなる内容です。
その1 「理念を軸に経営とブランドを一貫させる」
ブランディングの基本は「何のために存在しているか」を明確にすることです。理念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を明文化し、それを経営とブランドの両輪で運用している企業ほど、社内外からの信頼を集めています。
ネッツトヨタ南国株式会社(高知県)の取り組みは、その一例です。同社は『全社員の「人生の勝利」の実現」をめざす経営ビジョンを貫き、それを社内制度や接客スタイルにまで浸透させています。売上やCS向上といった成果とともに、同社の在り方自体がブランドとなり、多くのメディアからも注目を集めています(出典:東洋経済オンライン)。
このように、ブランドとは企業の“あり方”そのものです。外見的なリニューアルにとどまらず、企業の中核にある考え方を再確認し、それを言語化することで、全社的な一体感が生まれ、結果として市場からの評価も高まります。
その2 「自社らしさを言語化し、社内外で共有する」
ブランド価値を高めるためには、自社らしさ=“独自の強み”を言語化する作業が欠かせません。それは単にキャッチコピーを作るということではなく、「なぜこの会社でなければならないのか」という理由を明確にするプロセスです。
たとえば、男前豆腐店株式会社(京都府)は、個性的な商品名とパッケージデザインで独自性をアピールし、消費者の記憶に残るブランドイメージを構築しました。その背景には、「豆腐の概念を変える」という明確なメッセージがあります。従来の「安くて質素な食品」というイメージを壊し、豆腐をポップカルチャーの文脈にのせて再発信した姿勢が、ブランドへの共感と購入動機を生み出しています(出典:PR TIMES)。
自社らしさの言語化は、企業文化を明文化する営みとも言えます。それを社内外に伝え続けることで、ブレないブランドが育っていきます。
その3 「ブランド体験を設計し、日々の業務に落とし込む」
ブランド価値は、企業が「言っていること」ではなく、「やっていること」によって測られます。つまり、日々の業務の中にブランドの姿勢や考え方が表れていなければ、ブランドは定着しません。
今治タオル(愛媛県今治市)は、2006年から独自の品質基準に基づいた「今治タオルブランド認定制度」を導入し、消費者に一貫した安心と高品質の体験を提供してきました。タオルの機能や見た目だけでなく、「買う体験」「使う体験」を重視した取り組みにより、日常品であるタオルが贈答品や高付加価値商品のカテゴリに位置づけられました(出典:朝日新聞デジタル)。
ブランドは“体験の総和”です。ブランドとしての姿勢や考え方が、事業戦略や顧客体験にまで行き届いているか。その一貫した体現こそが、ブランド価値を着実に高めていく力になります。
その4 「情報発信を戦略的に行う」
せっかくのブランド価値も、正しく届けられなければ意味がありません。情報発信は、単なる広報活動ではなく、ブランドの認知と理解を深めるための戦略的活動です。
株式会社スノーピーク(新潟県三条市)は、大手メディアへの露出や広告よりも、ユーザーとの直接接点を重視しています。たとえば、自社キャンプ場でのイベント「Snow Peak Way」は、顧客がブランド体験を深める場であり、同時にSNSを通じた自然発信を促す場でもあります。製品説明以上に「ライフスタイルの提案」としてのブランド価値を強化しています(出典:日経ビジネス)。
日々のプロジェクトや考え方を地道に発信するうちに、共感するファン層が育ち、営業をかけなくても相談が舞い込むようになったのです。情報発信は、一方的な宣伝ではなく、対話のきっかけです。コンテンツの質とトーンをブランドに合わせて設計することが、信頼獲得の鍵となります。
その5 「ブランドを育てる視点で人材を活かす」
ブランドは、特定の部署や担当者が担うものではありません。むしろ、現場の一人ひとりがブランドをつくり、育てていく存在です。したがって、人材マネジメントの中にもブランディングの視点を取り入れることが求められます。
中村ブレイス株式会社(島根県大田市)は、社員が製品そのものの信頼性やブランドのあり方を体現しています。義肢装具という専門性の高い領域でありながら、社員のホスピタリティと地域に根ざした誠実な姿勢がブランドへの共感を呼び、全国から志望者が集まる人気企業となっています(出典:日本経済新聞)。
こうした取り組みにより、利用者とのコミュニケーションにおいても一貫した姿勢が保たれ、地域での信頼を着実に積み重ねています。人材を「ブランドの媒介者」として位置づけ、育成・評価においてもブランド視点を取り入れることが、組織の質を底上げし、ブランドの価値を高めます。
まとめ 「小さな一歩を重ねて、大きなブランド価値へ」
ブランドの価値は、短期的な広告キャンペーンや一時的なデザイン刷新によって築かれるものではありません。日々の判断、行動、コミュニケーション、そして組織全体の文化に深く根ざした“積み重ね”によって形づくられていきます。
本レポートで紹介した5つの取り組みは、いずれも中堅・中小企業が等身大で実践してきた内容です。どれも即効性はないかもしれませんが、確実に企業の信頼性を高め、永続的な成長につながる土台となります。
まずは自社の理念の見直しや、自社の強みの言語化から始めてみてはいかがでしょうか。小さな一歩の積み重ねは、着実にブランド価値の向上に繋がります。
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この記事・レポートについて
この記事・レポートは、20年以上にわたるブランディング実績と、ブランド戦略に関する最新事例の研究に基づいてフォアビスタ株式会社が執筆したものです。ブランディングにおける課題解決の糸口、戦略実行のヒント、実施施策のノウハウを提供しています。
