さまざまな意味で使われる「ブランド戦略」。当社が「ブランド戦略」を重視する理由を、noteでも紹介しています。
「フォアビスタが、ブランドコンサルティングで『ブランド戦略』を重視する理由。」 ↗︎
ブランディングの考え方
2026年7月28日 《更新》 9分読み


中堅・中小企業においてブランディングの重要性はますます高まっています。しかし、多くの企業は「ロゴを変えればブランドが強くなる」「広告を増やせば認知が広がる」といった表面的な施策に目を向けがちです。ブランドコンサルティング会社が「戦略」から考えるのは、単なるデザインやプロモーションではなく、企業の中長期的な成長を見据えた本質的な価値を構築するためです。本レポートでは、戦略的なブランディングの重要性を具体的な事例を交えながら解説し、実際に取り組む際のポイントを提言します。
多くの企業が直面するのは、「施策は打っているのに成果が出ない」という問題です。例えば、
これらの問題は、ブランド戦略が不十分なまま施策を進めた結果生じます。ブランディングとは単なる外見の変更ではなく、「市場におけるポジショニング」と「企業の価値の最大化」を目的とするものです。
ブランド戦略がある企業は、短期的な施策に左右されず、継続的に市場価値を向上させることができます。戦略的ブランディングの特徴として、
などが挙げられます。
広告やキャンペーンといった短期施策は、即時的な認知向上には役立ちますが、それだけではブランドの資産にはなりません。戦略的ブランディングとは、
というプロセスを経て、持続的な価値を生み出します。
中川政七商店は、奈良県で300年以上の歴史を持つ老舗企業です。元々は手織りの麻織物を中心に扱うメーカーでしたが、伝統工芸品の市場縮小により、売上の伸び悩みや将来の不安を抱えていました。特に、同社が主力としていた工芸品は一部の愛好家にしか届かず、大衆市場での認知度が低いという課題がありました。このままでは価格競争に巻き込まれ、ブランド価値を維持できない可能性が高まっていました。

同社は単なる商品開発や広告施策ではなく、「ブランド戦略」の視点から根本的な改革に着手しました。まず、「日本の工芸を元気にする!」というブランドのアイデンティティを明確に掲げました。そのうえで、伝統工芸の価値を現代のライフスタイルに適した形で伝えることを決定し、商品デザインの刷新やパッケージデザインの統一、百貨店や直営店を活用した販路拡大を実施しました。さらに、工芸品に関するストーリーを積極的に発信し、単なる商品の売買ではなく、文化的な価値を提供するブランドへと進化しました。
このブランド戦略によって、同社の商品は単なる伝統工芸品ではなく、「現代の暮らしに溶け込む価値のあるアイテム」として認知されるようになりました。その結果、百貨店や直営店での売上が大幅に伸び、ブランドとしての知名度も向上。従来の顧客層に加え、若年層や都市部の消費者にも広く受け入れられるようになりました。さらに、この成功を受けて他の伝統工芸企業とも連携し、業界全体の活性化にも貢献しました。
八百鮮は、大阪と愛知で生鮮食品の販売を手掛ける企業です。価格競争が激しいスーパーマーケット業界において、高品質な野菜、魚、肉をリーズナブルに提供することを強みとしていました。しかし、成長に伴い人材不足が深刻化し、特に若い世代の応募が少ないことが課題となっていました。単なる求人広告では求職者の関心を引けず、競争力のある人材確保が困難な状況に陥っていました。

八百鮮は、採用戦略をブランディングの一環として捉え、企業の魅力を再定義することにしました。まず、企業の価値観や働き方を明確に伝えるために、採用サイトのデザインとコンテンツを一新。社員のインタビューや、実際の仕事風景を伝える動画コンテンツを制作し、求職者に企業文化を具体的に伝えました。また、SNSを活用し、社風や職場の雰囲気をリアルタイムで発信。従来の八百屋のイメージを覆すような、スタイリッシュなブランディングを採用しました。
この戦略の結果、八百鮮の求人応募数は従来の5倍に増加し、特に若年層の関心を引くことに成功しました。応募者の質も向上し、優秀な人材を確保することができました。これにより、店舗運営の安定化と、さらなる事業拡大の基盤が整いました。従来の「求人広告を出すだけ」の方法では実現できなかった成果が、ブランド戦略の導入によって達成されたのです。
戦略的ブランディングの第一歩は、企業の現状を正しく把握することです。市場環境、競合とのポジショニング、顧客のニーズ、社内のブランド認識など、多角的な視点から分析を行います。特に、ブランドの強みと弱みを明確にし、どのような課題があるのかを特定することが重要です。
ブランド戦略の設計は、単なるマーケティング施策の積み重ねではなく、企業の成長戦略と密接に結びついたものである必要があります。ここでは、ブランドを市場にどのように位置づけ、どのように認知され、どのように成長させていくかを決定します。
特に重要なのはブランドの軸となるアイデンティティです。これは単なるスローガンではなく、企業の価値観、提供価値、そして顧客にとっての意義を含むものです。例えば、「日本の工芸を元気にする」という中川政七商店のブランドアイデンティティは、単なる製品販売を超えた文化的なメッセージを持っています。
戦略を実際の施策に落とし込み、段階的に展開します。ブランドのビジュアルやメッセージの統一、商品開発、採用ブランディング、デジタル戦略など、多岐にわたる施策が含まれます。短期的な広告施策だけでなく、長期的なブランド価値向上を見据えた実行計画を立てることが重要です。
ブランディング施策は実行して終わりではなく、継続的な評価と改善が必要です。ブランド認知度、顧客満足度、売上への影響、従業員のエンゲージメントなど、定量・定性の両面から評価を行い、必要に応じて調整を加えていきます。
自社だけでブランディングを進めるのが難しい場合、専門のブランディング会社に協力を仰ぐことも有効です。外部の視点を取り入れることで、より客観的かつ戦略的なブランド構築が可能になります。
ブランドは現場の社員だけでなく、経営陣が主導することで初めて組織全体に浸透します。経営層がブランドの価値を理解し、戦略に落とし込まなければ、社内でのブランド意識は希薄になり、短期的なマーケティング施策に留まってしまいます。
ブランドの浸透は一過性の施策ではなく、企業文化として根付かせることが重要です。そのためには、社員一人ひとりがブランドの価値を日常業務で意識し、実践できる環境を整える必要があります。
ブランドの価値を発信するのは、広告や製品だけではありません。顧客と直接接する従業員の言動や対応こそが、ブランド体験を形作る最も重要な要素の一つです。特に、営業・カスタマーサポート・店舗スタッフなど、顧客接点の多い部門では、ブランドの理解がそのまま顧客満足度に直結します。
ブランドの社内浸透が進むと、社員が企業のブランドに誇りを持ち、仕事へのモチベーションが向上するという効果も生まれます。社員が自社のブランド価値に共感し、それを日々の業務に反映することで、組織全体の一体感が高まり、離職率の低下や生産性向上にもつながります。
これまでの解説や紹介した事例からも分かるように、ブランディングは単なるデザインや広告の問題ではなく、企業戦略そのものと深く結びついています。中川政七商店はターゲットと提供価値を明確化することで価格競争を回避し、八百鮮は採用戦略を通じて人材確保に成功しました。いずれのケースも、単発の施策だけでは実現できない成果であり、戦略的なアプローチなしには成立しえなかったものです。
ブランドコンサルティング会社が「戦略」から考えるのは、このように長期的な成果を生み出すためであり、短期的な施策では解決できない本質的な課題に向き合うためです。企業がブランディングを成功させるためには、企業戦略との一貫性を持たせ、ターゲットを深く理解し、社内外にブランドを浸透させることが不可欠です。
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このレポートについて
フォアビスタ株式会社 代表・ブランディングディレクター
大手広告代理店、インターブランド ジャパン、デグリップ ゴーベ グループ ジャパンを経て、フォアビスタを設立。20年以上にわたり企業・事業・商品を対象としたブランド戦略の立案と実行/実装を統括している。経営とブランディングを結びつける伴走型アプローチで、絵に描いた戦略で終わらないブランドコンサルティングを実践。数多くのブランディングプロジェクトを成功に導く。
これまでに携わった主なブランドは、JR東日本、ラクス、寺岡精工、味の素、塩野義製薬、NTTドコモ、カゴメ、サントリー、ローソンなど。企業ブランディングから事業開発・組織活性化まで、その支援領域は包括的かつ多岐にわたる。

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