デジタルブランディング

ブランディング×SEO ──「検索されるブランド」をつくるには?

2025年4月24日8分読み

ブランディング×SEO ──「検索されるブランド」をつくるには?

エグゼクティブサマリー

本レポートは、「検索されるブランド」を構築するために、ブランディングとSEOをどのように連携させるべきかを探るものです。デジタル化が進む現代において、顧客との接点の多くは「検索」を通じて始まります。企業が認知され、比較され、選ばれるプロセスの中で、検索エンジンは欠かせないインフラとなりました。しかし、検索結果に表示されることだけがゴールではありません。検索行動の起点には、すでに頭の中にあるブランドの印象や期待があり、それが検索ワードの選定やクリックの判断に深く関わっています。

本稿では、検索されるブランドの特徴、検索行動におけるブランドの影響構造、そしてそれらを実現するための施策と事例を、専門的視点からわかりやすく解説します。とりわけ中堅・中小企業が限られたリソースの中で実効性の高いブランド戦略を展開するためのヒントを提供することを目的としています。

「検索されるブランド」とは何か?

「検索されるブランド」とは、単にSEO対策によって上位表示されるブランドを指すのではありません。顧客の頭の中にしっかりとした印象を残し、能動的に名前を検索される存在、あるいは課題を検索する際に自然と想起され、関連ワードとして打ち込まれるようなブランドを指します。

たとえば、「業務改善ツール」と検索する人が「社名 + 業務改善」や「◯◯(ブランド名) 導入事例」といった具体的なキーワードを使うケースです。これは、その人の中でブランドの認知と一定の評価が先行している状態を意味します。つまり検索の前に「想起」がある。この“想起される力”を育てるのが、ブランディングの役割であり、SEOとはその想起が検索に転換される導線を設計する技術なのです。

こうしたブランドは、ただの「情報提供」や「宣伝」ではなく、顧客の課題や価値観と結びついた文脈の中で記憶に残ります。その結果、競合の中から比較検討される際にも「指名検索」という形で優位に立つことができます。

ブランドが検索行動に影響を与える構造

顧客の検索行動は、実はブランドとの接点の影響を受けながら形成されていきます。ブランドが検索行動に与える影響は、大きく以下の3つの段階で説明できます。

① 想起フェーズ(検索前)

広告やSNS、展示会、オウンドメディアなどを通じて顧客の頭の中にブランドが蓄積されていきます。ここでは、ブランドが「どんな課題を解決する会社なのか」「何を強みとしているのか」というメッセージが記憶に残っていることが鍵になります。この段階ではまだ検索はされていないものの、後の検索行動のきっかけとなる「きざし」が生まれている状態です。

② 検索フェーズ(課題認識)

顧客が何らかの課題を明確に意識し、解決手段を探し始めるタイミングで、頭の中に残っていたブランド名や印象が検索ワードに影響を与えます。「社内の情報共有がうまくいかない」と感じた担当者が、「情報共有ツール」ではなく「◯◯(ブランド名) 情報共有」や「社名 + 評判」といったキーワードを使う場合、ブランディングの成果が検索行動に現れた好例です。

③ 選定フェーズ(検索結果の比較)

検索結果に複数の選択肢が表示されたとき、過去に触れたことがあるブランドはクリック率が高くなります。逆に聞いたことがないブランドは、たとえ検索順位が高くてもスルーされがちです。つまり検索結果に表示された後も、「どれを選ぶか」の意思決定においてブランドの記憶が作用しているのです。

このように、「検索されるブランド」は、検索前・検索中・検索後といった一連の検索行動すべてにおいて、顧客の意思決定を後押しする重要な要素となります。

「検索されるブランド」の実践事例

ここでは、「検索されるブランド」の実践事例を紹介します。SEOによる検索流入の最適化だけでなく、ブランド認知を高め、顧客との長期的な関係を築く戦略が展開されています。

事例❶ 株式会社クラシコム(東京都国立市)

「北欧、暮らしの道具店」を展開するクラシコムは、コンテンツを起点にしたブランド体験を設計し、SEOと指名検索の両面から「検索されるブランド」への成長を遂げました。オウンドメディアの構築により、「北欧 食器」や「北欧 家具」といった関連性の高い検索ワードで軒並み1〜2位を獲得。2023年現在、月間PV数は1,500万を超え、ECへの導線となるコンテンツ経由の流入が売上の中心を占めています。

さらに、ユーザーの72%が「毎日サイトを見る」と回答しており、検索されるだけでなく、検索行動のなかで“選ばれ続けるブランド”として定着している点も特徴的です。単なるSEO流入にとどまらず、検索体験全体をブランドのエンゲージメントへと昇華させています。

事例❷ 株式会社ベガコーポレーション(福岡県福岡市)

家具・インテリアEC「LOWYA」を展開するベガコーポレーションは、ブランド指名検索とSEOを組み合わせ、家具カテゴリでの検索主導型ブランディングに成功した企業です。同社は商品ごとにカテゴリ特化型のランディングページを設計し、「ダイニングテーブル」「サイドテーブル」「収納 家具」といった高ボリュームキーワードでの上位表示を実現。

ブランド名「LOWYA」やそのカタカナ表記「ロウヤ」の検索ボリュームは2020年から2023年にかけて1.8倍に増加し、SEO経由の新規流入から指名検索への転換が進んでいます。また、テレビCMなどのマス施策と連動させることで、検索がブランド理解の入口となる構造を築き、「検索される家具ブランド」としてのポジションを確立しました。

事例 株式会社土屋鞄製造所(東京都足立区)

ランドセルや革鞄を製造・販売する土屋鞄製造所は、職人のこだわりや製品の背景を紹介する自社メディア「読み物」を活用し、検索エンジンを通じてブランド認知を広げてきた企業です。単なる製品訴求にとどまらず、職人の声や開発ストーリーなど、検索者の関心に応える形で豊富なコンテンツを整備。結果として、「革 バッグ」で検索順位2位、「革製品」3位、「革財布」4位といったSEO成果を達成し、汎用ワードでの流入を大幅に拡大しました。

加えて、これらの指名性の低いワードからブランド接触が生まれ、2年間でEC売上を2倍に伸ばすことに成功。検索から接触、比較、購買というプロセスを、ブランド体験として統合的に設計した好事例です。

成功のポイント「検索とブランディングをつなぐ戦略設計」

検索されるブランドを構築するためには、戦略的なアプローチが不可欠です。ブランドの価値を効果的に伝え、ユーザーとの接点を増やすためには、以下にある3つのポイントが鍵となります。

ポイント① 「ブランドの立ち位置を明確にする」

「何の領域で頼れる存在なのか」を言語化し、顧客の頭の中に残るようにすることが第一歩です。専門性を曖昧にしないことが検索ワードの明確化にもつながります。

ポイント② 「検索される文脈を設計する」

ブランドに関連する「課題」や「用途」など、検索の入口になりうるキーワードを定義し、それらが自然とブランドと結びつくようにコンテンツや発信を最適化していきます。

ポイント③ 「SEOだけでなく、前段の接点を増やす」

ブランド想起はWeb上の情報だけで生まれるわけではありません。展示会やメール、営業資料、SNSなど、あらゆる顧客接点で一貫したブランド体験を設計することが重要です。オウンドメディアやプレスリリースも含めて、「指名検索」につながる情報設計が求められます。

まとめ

検索行動は、単なる情報収集手段ではなく、ブランドの存在と価値が試される場です。「検索されるブランド」は、SEO単体の成果ではなく、顧客の記憶に残るブランド体験の積み重ねから生まれます。つまり、検索結果に現れる前から、すでに競争は始まっているのです。

特に中堅・中小企業においては、潤沢な広告費を使わずとも、ブランドの立ち位置と検索される文脈を戦略的に設計することで、デジタル上の商機を大きく広げることが可能です。本レポートが、検索とブランディングを両輪でとらえるヒントとなり、自社のブランド価値を持続的に高める一助となれば幸いです。

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この記事・レポートについて

この記事・レポートは、20年以上にわたるブランディング実績と、ブランド戦略に関する最新事例の研究に基づいてフォアビスタ株式会社が執筆したものです。ブランディングにおける課題解決の糸口、戦略実行のヒント、実施施策のノウハウを提供しています。

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そのブランドに、次の一手を。経営視点のブランディングで、成長を加速させる会社です。そのブランドに、次の一手を。経営視点のブランディングで、成長を加速させる会社です。お問い合わせフォームお問い合わせフォーム