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Branding
ブランディングとは

ブランディングとは
シンプルで効果的なブランディングのご紹介





1 ブランディングとは

1ー1 何から手をつければ良いのか分からない

マーケティング戦略としてだけでなく、マネジメント戦略やリクルーティング戦略としても欠かせない戦略となったブランディング(英 : branding)。その一方で、企業のブランディングご担当者様からは「やりたいことはイメージできているのですが、実際に取り組もうとすると何から手をつければ良いのか分からなくなってしまって…」という率直な声が頻繁に聞かれます。

そんなブランディング。大辞泉には「顧客や消費者にとって価値のあるブランドを構築するための活動」、Wikipediaには「ブランドに対する共感や信頼などを通じて顧客にとっての価値を高めていく、企業と組織のマーケティング戦略の1つ」と書いてあります。何やら漠然としていて難解な印象…。確かに何から手をつけて良いのか分からなくなってしまいます。

ブランディングとは

では、どのようにすればブランディングに取り組みやすくなるのでしょう? さらに、どのようにすればブランディング成功の可能性を高めることができるのでしょうか? 

1ー2 ブランディングとは

肝心なのはブランディングをシンプルに定義すること。ブランディングを難しく捉えず、分りやすいゴールを設定することで、実用的で効率的なブランディングが行えるようになります。

そもそも「ブランド」は「名称」でもあります。そして「ブランド」と「名称」の違いは、“私のもの”と認識されているか否かの違いに他なりません。つまり生活者や流通から“私のもの”と思われるようになった段階で、「商品名称」が「商品ブランド」に昇格し、社員や社会から“私のもの”と思われるようになった段階で、「企業名称」が「企業ブランド」に昇格するのです。

シンプルに定義してみましょう。平たく言うと、生活者や社員などのステークホルダーから“私のもの”と思ってもらうアプローチが「ブランディング」なのです。

1ー3 商品ブランディングと企業ブランディング

ちなみに商品名称は「会社のもの」ですが、商品ブランドは「会社のもの」だけでなく、「生活者のもの、流通のもの」でもあります。

商品ブランディングと企業ブランディング1

同じように企業名称は「役員/株主のもの」ですが、企業ブランドは「役員/株主のもの」だけでなく、「社員のもの、社会のもの」でもあるのです。

商品ブランディングと企業ブランディング2

ステークホルダーから、いかに“私のもの”と思ってもらうか。ブランディングは「商品ブランディング」と「企業ブランディング」の2つに大別できますが、本コラムでは後者の「企業ブランディング」を成功に導く秘訣を、第2章の【ブランディング概論】と第3章の【強い企業ブランドをつくるアプローチ】にてご紹介します。




2 ブランディング概論

2ー1 ブランディングニーズの高まり

近年、書店に並んでいる沢山のビジネス関連書籍を眺めていて気付くことがあります。それは「ブランディング」や「ブランド戦略」をテーマにした書籍が非常に多いこと。2000年頃はほんの2〜3冊見かける程度でしたが、今ではビジネス関連書籍コーナーでも大きなウエイトを占めています。

ちなみにブランド戦略の世界的権威であるデービッド・A・アーカー氏の「ブランド・エクイティ戦略」と「ブランド優位の戦略」の訳書が日本で出版されたのは1994年と1997年。その上梓を契機に“ブランディング”という聞きなれない言葉が日本でも使われるようになり、ブランディングに関するビジネス書が急増していきます。この現象は、ここ20年間におけるビジネス領域におけるブランディングニーズの高まりと比例していると言っていいでしょう。

ブランディングニーズの高まり

2ー2 ブランディングニーズが高まっている理由

ではなぜビジネス領域においてブランディングニーズが高まっているのでしょうか? その理由は極めてシンプルです。つまり「戦略的にブランディングを行っている企業ほど業績が良い!」という現実に、多くの企業が気づいたのです。

ブランディングニーズが高まっている理由
出所;インターブランド

ちなみにブランディングの概念そのものは新しいものではありません。実際、優れた企業(高業績を続けている企業)は、ブランディングという言葉が使われるようになるずっと以前から、事業や企業の存在価値を高める事業活動や企業活動を地道に行ってきました。それが近年になってブランディングという呼び名を与えられ、改めて認識されるようになり、新たな取り組みとして注目されるようになりました。

2ー3 ブランディングに関する最近の傾向

さて、デービッド・A・アーカー氏の2冊の本は、“社外に向けてブランド価値を高めるマーケティング活動”をブランディングとして顕在化し、その方法論を体系化しました。ただ最近では、“社内に向けてブランド価値を高めるマネジメント活動”も含めてブランディングと呼ぶ傾向にあります。その最近の傾向について少し詳しくお話したいと思います。

ブランディングに関する最近の傾向

2ー4 従来のブランディング

デービッド・A・アーカー氏によって体系化されたブランディング理論は、市場において競争優位を確立する方法論です。その方法論を要約すると、「会社や商品の独自性を強め、競合との差別化を図ることによって、ブランド価値を高める。その一連の活動の梃子に、ブランド・エクイティ(ブランドの名称やシンボルと結びついた資産。たとえばブランドロイヤルティなど)を据える」というものです。そのようなアプローチは有効なマーケティング手法として多くの現場で実践されていますが、それらの根底となる方法論は、基本的にデービッド・A・アーカー氏が提唱したものであると言っても過言ではありません。

従来のブランディング
出所;「ブランド優位の戦略(ダイヤモンド社)」

2ー5 新しい系譜のブランディング

しかし近年、その方法論とは異なる系譜のブランディングが登場しています。それはインナーブランディング。従来のブランディングが社外(エクスターナル)の顧客が対象であるのに対し、インナーブランディングは文字通り社内(インナー)に向けた施策です。主な目的は社員の意識改革や業務改善、新規社員のリクルーティング効率の向上などです。

新しい系譜のブランディング

時代に合わせて必然的に生まれたインナーブランディングに明確な定義はありませんが、あえて定義するならば、「社員満足を高める旗印(もしくは社員の在り方を示す指針)にブランドを据えるマネジメント手法」という表現が相応しいでしょう。企業力や商品力は社員力に比例して強くも弱くもなります。社員力を一丸にして強化するインナーブランディングは、ブランド力を高める重要なマネジメント手法として、今後ますます注目されるに違いありません。




3 強い企業ブランドをつくるアプローチ

3ー1 企業ブランディングを成功に導くために

“社外的にブランド価値を高めるマーケティング活動”であるアウター(社外)ブランディング。そして“社内的にブランド価値を高めるマネジメント活動”であるインナー(社内)ブランディング。ブランディングの主幹が経営企画部門やマーケティング部門であれば前者、人事部門や総務部門であれば後者に取り組む企業が多いのですが、本質的に企業ブランディングを成功に導くためには両者を同時に行う必要があると考えます。それはなぜか。その理由を説明する前に、ブランディングのキーワードとなる「ブランドアイデンティティ(以下BI)」について触れたいと思います。

3ー2 スタバのBI(ブランドアイデンティティ)

例えば「第三の場所(The Third Place)」。これはスターバックスのBIです。コーヒー事業を通して、職場でも家庭でもない第三の場所を提供することが、スターバックス・ブランドが目指す存在意義なのです。ちなみに「第三の場所」は社員や従業員にとって馴染みのあるスローガン(社内ステートメント)ですが、タグライン(社外ステートメント)ではないので、一般的には馴染みのあるものではありません。でも皆さんは「スターバックスが目指しているのは職場でも家庭でもない第三の場所です」と聞いて納得できるのではないでしょうか。もしそうであれば、それは同社のブランディングが社内外で実を結んでいる証です。

スタバのBI(ブランドアイデンティティ)
出所;スターバックスコーヒー

3ー3 サントリーのBI

ではもう1つ。「水と生きる」は見覚えのある方が多いと思います。これはスローガンとタグラインが一体となったサントリーのBIです。酒類事業を柱とする同社は持続可能な企業成長を実現するために酒類以外の事業にも注力しなければなりません。実際、顧客が同社から連想する<アルコール類のイメージ>は現実的な機会損失要因として顕在化していました。そこで顧客に向けたブランディングの核として「水と生きる」を宣言したのです。これは同時に、「人々の生命や生活、そして経済を考える上でも重要な資源である“水”と生きることで社会的責任(CSR)を果たす」という強い意志を社内に宣言する意図もありました。

サントリーのBI
出所;サントリー

ちなみに、このBIを発表した2005年に、サントリーはロゴマークも一新します。大企業にとって非常にコストのかかるロゴマーク変更に踏み切った背景には、「『水と生きる』というBIを社内外へ向けて周知徹底する」という戦略的思惑があったのです。

3ー4 アイデンティティの成立

スターバックスとサントリーの例は、アウター(社外)ブランディングとインナー(社内)ブランディングが同時に行われている好例です。そしてどちらの場合も、企業ブランディングの核に据えたのはBIでした。そんなBI(ブランドアイデンティティ)とは何なのか? もう少しだけ掘り下げてみたいと思います。

そもそも“アイデンティティ”はラテン語の「同一」に由来する言葉です。辞書には「一致、同一であること。本質、本人であること。同一性、自己認識(小学館ランダムハウス英和大辞典)」とあります。平たく言うと、「自分とはこうだ!と思ったことを相手もそうだ!と同意してはじめてアイデンティティが成立する」となります。

アイデンティティの成立

そんなアイデンティティを、“人”ではなく“ブランド”に当てはめたのがBI(ブランドアイデンティティ)です。ちなみに企業ブランディングに成功している企業には共通して秀逸なBIが存在します。しかし、これから企業ブランディングに取り組もうと考えている企業については、BIに課題を抱えているケースが少なくありません。以下、そのようなケースを「BIにおける3大課題」としてご紹介します。

3ー5 BIにおける3大問題点

課題1。
先ずは企業が「私はこういうブランドです」という意志を表明していないケース。BIを成立させようにも、そもそもBIの実態そのものがありません。

このケースでは、「BIの実態づくり」が企業ブランディングを成功に導くポイントとなります。その企業のビジョンやミッションやコアバリュー、そして顧客に提供するベネフィットなどから、その企業ならではのBIを戦略的に抽出します。

BIにおける3大問題点1

課題2。
次はステークホルダーから「あなたはそういうブランドです」と認められていないケース。企業が「私はこういうブランドです」と表明しているものの、その内容に同意されなかったり、疑われたり、内容そのものがコミュニケーション不足で伝わっていないケースです。

このケースではBI成立のギャップを埋めることが企業ブランディングを成功に導くポイントとなります。企業側の意思表明内容を客観的に見極めつつ、ステークホルダー側の要望や期待に耳を傾けることで、両者にとって有益なBIを戦略的に抽出します。

BIにおける3大問題点2

課題3。
3つめは企業とステークホルダーとの間でBIが成立しているものの、そのBIでは魅力あるブランドとして勝負できなくなっているケースです。つまりBIが当たり前過ぎて他と差別化できないのです。

このケースでは魅力あるBIの抽出がブランディングを成功に導くポイントとなります。その企業のビジョンやミッションやコアバリューを見つめ直し、企業とステークホルダー双方のベネシットを追求することで、独自の価値を持ったBIを戦略的に抽出します。

BIにおける3大問題点3

3ー6 BIを成立させるアプローチ

さてBIを成立させるためには2つのアプローチが必要です。それはインナー(社内)に向けたアプローチとアウター(社外)に向けたアプローチ。本質的に企業ブランディングを成功に導くためには、両者を同時に行う必要があります。ここでは企業ブランディングの肝である「ブランドプロミスの構築」を踏まえながら、2つのアプローチをご紹介したいと思います。

下の図をご覧下さい。ここにあるブランドプロミス(マネジメント軸)は、社員にとってのブランド価値を高めるために必要な約束を図式化したものです。ブランドの在り方や目指すべき方向性を“ブランドの社内的な約束”として示すことによって、社員にとっての企業ブランドに明確なコンセンサスを与えると同時に、社員の働き甲斐・モチベーションの源泉として機能させます。

BIを成立させるアプローチ1

さらにもう一つの図をご覧下さい。ここにあるブランドプロミス(マーケティング軸)は、顧客にとってのブランド価値を高めるために必要な約束を図式化したものです。ブランドの魅力を顧客に実感してもらうための“社外的な約束”は、事業運営を行う際のマーケティング指針として具体的な実行に移されます。

BIを成立させるアプローチ2

ご紹介した2つの図から、2つのブランドプロミスが1つのBIで繋がっていることがお分かり頂けると思います。結論を言ってしまうと、社員(インナー)と顧客(アウター)の両方から“そのブランドは私のもの”と強く思ってもらうことでブランド価値は高まります。そしてBIこそ、社員や顧客から“そのブランドは私のもの”と強く思ってもらうためのキーワードなのです。

実現可能かつ社員や顧客にとって有益かつ魅力的なBIを策定することが、企業ブランディングを成功に導く鍵に他なりません。

3ー7 強いブランドをつくる基本プロセス

企業ブランドにせよ商品ブランドにせよ、強いブランドをつくるプロセスは極めてシンプルです。先ずは一貫性のある活動指針を<ブランドプロミス>としてまとめます。そして活動指針にのっとって顧客ベネフィットを生み出す行為として<事業活動>を行います。さらに事業活動による成果を<ブランドシンボル>に蓄積することで、結果的にそのブランドを見るとブランドプロミス(ブランドアイデンティティ)を想起するようになります。

ちなみに強いブランドは例外なくこのプロセスが循環しています。このプロセスが循環しているからこそ、ブランドが強くなっていると言ってもいいでしょう。

そして、これから企業ブランディングを行いたいと考えている企業の多くは実直に<事業活動>を行っているにも関わらず、その手前の部分である<ブランドプロミス>が整備されていなかったり、その後の部分である<ブランド>が有効に機能していなかったりする場合がほとんどです。実直に<事業活動>を行っている企業様に対し、<ブランドプロミス>の整備や<ブランド>の有効化をサポートすることが、私たちブランドコンサルティング会社の役目なのです。

強いブランドをつくる基本プロセス
ブランディングとは?

筆者

東 隆範

ブランディングディレクター/代表取締役

千葉大学工学部卒業後、広告代理店、英国系ブランドコンサルティングファーム、仏国系ブランドコンサルティングファームを経て、現在フォアビスタ株式会社のブランディングディレクター。ブランドに持続的な競争優位をもたらすため、また魅力的なブランドを創造するため、対処療法的ではなく体質改善的な視点でブランドコンサルティングを行い、多くのプロジェクトを成功に導く。